しなやかな私をつくる本 #26『35歳からわたしが輝くために捨てるもの』

女性が生き方や考え方をアップデートし、つよくしなやかな自分を目指すのに役立つ本を月に1冊紹介します。


歳を重ねて魅力的になる人、残念になる人の違いは?

歳を重ねるにつれて、ステキになっていく人、残念な感じになっていく人――いい年の大人になると、人は大きくふたつのタイプに分かれるように見えます。今の自分を好きでいる。大切にケアしている。かろやかに生きている。私が普段かかわるステキな先輩女性たちは、そういった要素を持っているような気がします。
最近読んだ『35歳からわたしが輝くために捨てるもの』(かんき出版/松尾たいこ)が、ステキな大人を目指すヒントを与えてくれそうです。著者は35歳でデビューしたイラストレーター、松尾たいこさん。イラストレーターとして独立するまで、地元の広島で会社員として勤めていた松尾さんは、一念発起して上京。若者たちに混じってスクールに通い、今や売れっ子イラストレーターに。
コンプレックスだらけだった、と話す松尾さんは、「はじめに」でこうつづっています。

「自分で勝手に自分の可能性をきめつけて、暗くなる必要なんてありません。何度でも言いたいです。何歳からでも、いつからでも人は変われます」(7ページより引用)。

本書から、今日からでも使える「自由で楽しい歳の重ね方」にまつわる考え方を3つご紹介します。

「でも」「だって」否定から入る言葉を捨てる

「でも」や「だって」といった否定から入る言葉。1日に何度くらい口にしていますか。無意識のうちに、なんとなく使っていませんか。
年齢を重ねるとそれなりに経験が増え、自分なりの基準や考え方が生まれます。それは当然だとしても、他人の意見に対して「でも、私の場合はこう……」「だって、私はこうだから……」などと反論するのはいかがなものか。
松尾さんは、人の言葉を柔軟に聞いて受け止められる素直な人と、人の言葉に耳を貸さない頑固な人との間には、のちのち大きな差が生まれるといいます。そもそも、たかが30~40年生きている自分の人生経験なんて、ちっぽけなもの。意固地になって人の意見や新しい情報に心を閉ざしていると、自分を進化させることができず、結果的に損。

「『世界の99パーセントは自分の知らないことでできている』と思ったら、きっとどんな意見も、素直に受け止められるようになるのではないでしょうか」(25ページから引用)

相手の意見やアドバイスを受け止めて、実際にやってみる。でも合わなかった。そんなときはやめればいいだけ。素直でやわらかい心を持って生きている人のところには、人や情報が集まってくるはずです。

ぶれたっていい、と考える

ぶれない人、というのはカッコいい。芯が1本通っていて、安定感がある。そんなふうに見えることがあります。
松尾さんもかつて、ぶれない大人に憧れた時期があったといいます。しかし、今は「必ずしもぶれない大人がいい、というわけではない」と考えるように。

「時代の流れだって急だし、頑なに自分の意見を変えない人よりも、柔軟に生きていける人がステキだなと思うようになった(中略)昨日と今日の自分の意見が違ってもいいと思えるようにもなりました」(56ページより引用)

出会う人、目にするもの、体験することなどによって、人は何らかの影響を受けて、自分のなかに変化が生じるのはあたりまえ。日々普通に生きているだけで、さまざまな人・もの・ことにふれるわけだから、自分自身は変わっていって当然です。
そんななか、無理に「あのとき、ああいうふうに宣言しちゃったから、ぶれちゃいけない」というふうに思い込むと、自分を追い詰めて、つらくなってしまうだけ。
ぶれたっていい。変わったっていい。思いや考え方が変化するのは自然なこと。そう考えると生きやすくなるのと同時に、人はいくつからでも変われるのだと、前向きな気持ちが生まれそうです。

他人に嫉妬心を抱かない工夫をする

SNSが普及した現代は、周りの人たちの動向が嫌でも目に入ってきます。結果、嫉妬心を抱いてしまうことも。松尾さんは、「仲はいいけど、嫉妬や妬みを感じてしまう相手」と関わると、二重の意味で疲れると指摘しています。
ひとつは、嫉妬する度に自分自身がモヤっとするのを自覚して疲れてしまうこと。もうひとつは、「いちいち嫉妬を感じてしまうなんて、自分は器の小さい人間だな」と自分を責めたり、自己嫌悪に陥ったりして、疲れてしまうこと。あながち仲の悪い相手ではないだけに、どう対処すればいいのか悩む方もいるかもしれません。

「ポイントは『笑ったままで撤退』すること。『またねー』と笑顔で手を振りながら、少しずつ後ずさりするのがコツ。わざわざ揉めたり喧嘩する必要はありません」(76ページより引用)

この文章を読んで、ある人から聞いた話を思い出しました。対人間よりも対自然のほうが、はるかにかかわり方が難しいのだ、と。
人の悩みは人間関係が9割、と聞きます。でも、人間相手であれば、距離を置きたいと思う相手から離れるだけで、問題のほとんどは解決します。一方、自然は人間が自由にコントロールできる存在ではありません。天災はもちろん、天候や気温の変化だって制御不能。離れようと思っても離れることはできない。
そう考えると嫉妬心を抱かずに、心穏やかに過ごすための行動は、決して難しくないといえるのではないでしょうか。

全5章に渡って、無理せず、自分らしく、心地よく、ラクに生きるための方法がつづられた本書。かろやかに生きたい、と願うすべての女性たちにすすめたい一冊です。

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2017.09.07

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記事を書いたのはこの人

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Written by 池田 園子(いけだ そのこ)

岡山県出身。中央大学法学部卒業後、楽天、リアルワールドを経てフリー編集者/ライターに。関心のあるテーマは女性の生き方や働き方、性、日本の家族制度など。結婚・離婚を一度経験。11月14日に『はたらく人の結婚しない生き方』を発売。 写真撮影ご協力:青山エリュシオンハウス 撮影者:福谷 真理子