しなやかな私をつくる本 #23『今日は、自分を甘やかす』
女性が生き方や考え方をアップデートし、つよくしなやかな自分を目指すのに役立つ本を月に1冊紹介します。
自分のこと、ときには甘やかしたっていいんです
「甘やかす」というと、あまり良い響きに感じられない人もいるかもしれません。でも、現実世界で元気に、心身ともに健やかに生きていくには、まずは自分自身を大切に扱ってあげる必要がある。それが自分を甘やかす、につながると思うのです。
「もっと○○しなければならない」「○○にならないといけない」など、思い込みに縛られて、自分を厳しく律しすぎていると、心身が疲弊してしまいます。外部からストレスや圧力を受けやすい現代社会だからこそ、自分に対しては適度に優しくしたい。
せめて、疲れ果ててしまった今日くらいは、自分を甘やかしたっていいじゃない。そうやって良い意味で自分を甘やかし、日々をほがらかに生きるヒントを与えてくれるのが、twitterフォロワーが14万人超のフリーライター、夏生さえりさんの著書『今日は、自分を甘やかす』です。
全5章に渡って48もの「いつもの毎日を愛し、ほがらかに生きるコツ」が紹介された本書から、今日からでも実践できる項目をいくつかよりすぐってご紹介します。
全ての動作をゆっくりにする
私たち現代人は何かと忙しい。慌ただしい日々を送っていて、そこに疲れを感じている人も多いのでは。さえりさんは、「マイペースで生きられたら困ることもないのだけれど、人は案外『雰囲気』に飲み込まれやすい」(24ページ)と指摘します。
確かに周囲がセカセカ・ピリピリしていたら、図らずもその空気を感じとって、自分も急がなければ、早く済ませなければ、などと自らの行動に反映させた経験はありませんか。結果、不自然に焦るあまり、うまくいかない……。
でも、周りが忙しなく見えたとしても、実は誰も自分のことを急かしてなんていないのです。「急いで!」「早く!」などと言われているなら話は別ですが。そう考えると、スピードをもっと落としてもいいんじゃない? というのが本書の提案。
「ゆっくり話し、ゆっくりまばたきをする。何かを手に取るとき、振り返るとき、歩くとき。全ての動作で、『ゆっくり』を意識する」(25ページ)
ゆっくりとノロノロとは似て非なるもの。さえりさんの提案する“ゆっくり”は、自分を落ち着かせるだけでなく、周囲にも安心感を与える方のゆっくり。自分を心地良い状態に持っていき、良い結果を出すためにも、つい焦ってしまうときは、「意識的にゆっくり」を心がけてみては。
心の違和感に素直に耳を傾ける
ヒト、モノ、コト……生きていると、それらにちょっとした違和感を覚えること、ありませんか? 例えば「この人、自分とは合わないかも。これから仕事をしていくの不安だな」「この仕事、不確定要素が多くて、大丈夫かな」「この話、何だか怪しいな」など。
こういった気持ちは、“直感”や“本能”と言い換えられるものかもしれません。さえりさんは、「直感が、本能が、そう言っているのだから、それはそのままに受け止めちゃえばいいと思う」(74ページ)と言い切ります。
無理をして、心に生じた違和感を封じ込めて、何も感じなかったことにして物事を進めていくと、それがうまくいかなかったときに、猛烈に後悔することになるはずです。「どうしてあのとき、何かがおかしいと感じたのに、途中で引き返さなかったのか」と。自己嫌悪に陥り、自分のことも相手のことも、嫌いになってしまう可能性が高いです。
「嫌なものは嫌。そうやって、心の声に敏感になっていく方が、人にも自分にも優しくいられるコツだと思う」(76ページ)
自分の心の声をきちんと聞いて、それに沿って動くことができるのは自分だけ。だからこそ、ちょっとした違和感を見逃さないようにして、次の行動にいかしたいものです。
自分のためにも人を褒める
「褒める」は簡単に見えて、実は難しい行為かもしれません。海外の映画やドラマを観ていると、ごく当たり前のように、自然な褒め言葉がすらすらと出てきます。一方、私たち日本人の日常生活において、褒め言葉はナチュラルにとり交わされていない感。
でも、人をうまく褒められるようになると、相手が喜ぶだけではなく、その姿を目にした自分自身も気持ちよく、うれしくなる、というのが本書の主張です。
ただ、注意しなければならないのは、とにかく褒めればいいというわけではなく、心底思っていることしか褒めない、ということ。上っ面のお世辞や思ってもいない褒めは、相手に対しても失礼ですし、見透かされます。
思い返してみれば、良い褒められ方をしたときは心が華やぎ、褒めてくれた相手も褒められた自分も、最高に幸せな気持ちになっているもの。一方、「この人、明らかに適当に褒めているな」というときは、しらけてしまうかも……。
「言葉と気持ちが同じ方向を向いていれば人にも誠意が伝わるし、自分自身も気持ちよく暮らしていける(中略)できるだけ人を褒めてみる。そうすることで結果的に自分も褒めてもらえて、素直に受けとれるなんて、幸せのループじゃないだろうか」(136ページ)
思ったことしか口にしない。でも、本心から「いいな」「ステキだな」と思ったことは、相手にきちんと伝わるように全力で褒める。そういう真剣な姿勢は、自分も目の前の相手も、確実に幸せへと導いてくれるはずです。
本書を読了すると、著者のさえりさんは、存在そのものがほがらかで、向日葵のような方なのだろう、と想像させられました。自分にも他人にもウソをつかず、誠実にまっすぐ生きる。無理をしすぎず、心地よく生きることで、自分も他人もほほ笑ませて、幸福感で満たす――。
彼女の生き方や考え方は、私たちが優しくも厳しいこの世界を、悠々と生きていくために参考になるはず。疲れたとき、いま無理をしているんじゃないかと思ったときに読み返したい、ベッドサイドに置いておくといい、心に寄り添ってくれる1冊です。