しなやかな私をつくる本 #20『少ない予算で、毎日、心地よく美しく暮らす36の知恵』

女性が生き方や考え方をアップデートし、強くしなやかな自分を目指すのに役立つ本を月に1冊紹介します。


心地よく、美しいシンプルライフを目指したい方へ

シンプルな暮らしがしたい――。ものをたくさん持つことがよしとされた時代は過ぎ去り、今は「持たないこと」こそがカッコいいとされる時代。断捨離や片づけ、ミニマリストなどがブームになり、ものを捨ててシンプルになろうとする流れがあります。
でも、身の回りをシンプルに整えることには落とし穴もあります。一歩間違えると味気なくなったり、無機質に感じられたり……。シンプルな部屋は生活感のない空間になり、シンプルな服は地味に見えたり……心踊る感覚とは無縁の生活になってしまうことも。
単なるシンプルライフは趣がない。自分らしさをミックスしたシンプルライフを送りたい……そんなシンプル+αで遊びたい人におすすめなのが、『少ない予算で、毎日、心地よく美しく暮らす36の知恵』(出版社: ディスカヴァー・トゥエンティワン、著者: 加藤ゑみ子)です。心地よく、美しく暮らすための36の知恵が紹介された本書の「初級編 自分自身の『定番』を見つける」から、私たちが今日からでも実践できる衣・食・住にまつわる項目をひとつずつご紹介します。

好きで、似合う服だけを着る

シンプルと聞いて、ファッションを思い浮かべる人は多いはず。衣食住の一番最初にやってくる「衣」。必要なものだけが収納されたクローゼットは、心地よく、美しく暮らす上で重要な要素です。
ためらいなく買えるプチプラ服が普及したこともあって、クローゼットから服があふれそうになっていたり、着ない服がたまっていたり……理想とするクローゼットにはほど遠いと感じている人もいるでしょう。
では、どうすればシンプルで、心地よく、美しい服だけを持てるようになるのか。加藤さんは「『好き』より『似合う』を優先させること」といいます。ここで私たちは、好きな服=似合う服ではない、と自覚する必要があります。
服作りの現場では、形・素材・色の順に考えられているため、まず形状が自分に合っているかどうか、自分をきれいに見せられるかどうか、という観点でジャッジした後、素材や色についても検討すべきだと、加藤さんは言うのです。その上で、自分の手持ち服を1枚1枚、どういう人に似合うかイメージしていき、自分以外の人には似合わない、と感じる服“だけ”を残すと、とくに美しく見える服だけが残る、といった「テイストチェック」を勧めています。
この方法はとても効率的。自分を魅力的に見せる服だけが収まった、統一感のあるクローゼットに生まれ変わるはずです。

「定番」といえる家庭料理を持つ

自分の「定番」といえる家庭料理はありますか? いつも同じものを食べていると飽きてしまいそうだと懸念されるかもしれませんが、いつもの食材を旬の食材に置き換えるだけで、料理に変化を与えることができます。定番料理を持つメリットを加藤さんはこうつづっています。

「忙しい毎日の中でメニューを考え、食材を購入する煩わしさから解放されます。食材や調味料のそろえ方についても、食器、鍋のそろえ方においても、無駄がなくなります」

納得感がありますよね。シンプルライフを目指すなら料理も定番のメニューにしてみる、というのは理に適っています。加藤さんは定番料理をなににするか悩む私たち読者に向かって、こんなアドバイスもしています。

「家庭料理で重要なのは、第一に栄養的配慮、第二に簡単にできること、第三に美味しいこと」

「さらにもうひとつ。見栄えです。彩りもよく、すっきりとしたお皿に美しく盛りつけられた、見るからに美味しそうな料理は、毎日の生活を美しいものにします」

毎回違うもの、凝ったものを作る必要はないのです。なので案外、難しくはありません。これ、という定番料理を見出したら、定期的に作るようにして、よりおいしくできるよう、練習を積み重ねていくとよいでしょう。

シンプルな住まいを維持する

そもそもなぜ、シンプルを目指すのか。本書の根っこともいえる問いに対し、著者の加藤ゑみ子さんはこう答えています。

「シンプルを目指すのは、ものの形も機能も人との会話も、すべて余計なものがないことで、かえって豊かになるからです。削ぎ落とすのは豊かさのためです。煩雑さをなくすだけでなく、別の大切なことを探し出すためです。いわば、豊かさのためのシンプルです。不要なものがないことで、ほんとうに大切にしたいことが表現できます」

これを読んで、ふと思い出したのは、10年連続でミシュラン三つ星を獲得する快挙を成し遂げた、某フレンチレストランです。シェフはシンプルであることをとても大切にしていました。料理は食材も盛り付けもシンプルにし、店内には装飾品をまったくといっていいほど置かず、BGMもかけないのです。
理由は、最高の食材を使い、最適な調理法で仕上げた料理を、五感を使って堪能してもらいたいからだといいます。余計なものが五感を通して入ってこないことで、お客さんは料理の味や香り、食感に集中できるようになり、食体験に没入できるというわけです。
自信を持って提供する料理を、最高な形で味わってもらいたい、という店側のスペシャルなおもてなしだなあと感じました。
さて、では住まいをシンプルにしたいなら、どうすればいいか。加藤さんは「必要最低限しか置かない」「ものを見せない」を大前提に、「片づける」「ときどき処分する」を繰り返すことだといいます。
そのサイクルを習慣化してしまえば、シンプルな室内を保ち続け、モノが減ることはあっても増えることはなく、適切な状態を維持できるようになるのです。

心地よく、美しい暮らしに一歩ずつ近づいていく

上記で紹介した初級編に続き、中級編では「無駄をなくす」、上級編では「美しさを目指す」と36の提案を読み、参考にして取り入れてみるうちに、心地よく、美しい暮らしに近づけていけるはずです。

どれも思い立ったその日から、コツコツと実践できるものばかり。シンプルなだけではなく、美しく生きたい・暮らしたいという大人の女性に読んでほしい1冊です。

2017.03.23

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記事を書いたのはこの人

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Written by 池田 園子(いけだ そのこ)

岡山県出身。中央大学法学部卒業後、楽天、リアルワールドを経てフリー編集者/ライターに。関心のあるテーマは女性の生き方や働き方、性、日本の家族制度など。結婚・離婚を一度経験。11月14日に『はたらく人の結婚しない生き方』を発売。 写真撮影ご協力:青山エリュシオンハウス 撮影者:福谷 真理子