【連載!】旬なハチロクに会いたい Vol.4 五十嵐豪さん

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2015.11.13.Fri

ライター/編集者の池田園子が同世代(86~87世代)の旬な人に「仕事の話」を伺う連載です。

「しかない料理」「大盛りダイエット」など独創的なアイデアで、学生時代から料理研究家として活躍する五十嵐豪さん。現在は料理研究家という枠にとらわれず、地方の食や地域の活性にとり組んだり、日本の安全・おいしい食を世界の食文化にすべく海外に出向いたりと、活動の領域を広げ続けています。
企画力に行動力、実行力――すべてを持つのが五十嵐さんの魅力です。今回、その五十嵐さんに仕事の話をうかがってきました。

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Webと本、テレビ……どれも大切な仕事

質問

池田: 現在どんなお仕事をしていますか?

回答

五十嵐豪さん(以下五十嵐): 「食を通して大切な人との暮らしをもっと楽しく」というテーマを掲げ、フードクリエイティブファクトリー(以下、FCF)という会社で、食に関するさまざまな事業を行っています。レシピ制作や記事執筆・メディア運営などを通して、大切な人との暮らしを今まで以上に楽しくする人を増やすことを目標にしています。

FCFは僕自身が2007年に個人事業としてスタートし、2009年に会社化しました。現在は妻が代表取締役をしています。FCFが行う事業の枠を超えてやりたいことが出てきたので、僕は会長として新しいことに挑戦している最中です。

障がいを持つ子どもたちの自立した生活を料理でサポートしたい

質問

池田: 「会社の枠を超えた新しいこと」とは具体的にどんなことでしょうか?

回答

五十嵐: 障がいを持つ子どもたちが、安全に料理を楽しみながら自立した生活に必要な教養やスキルを学べる放課後デイサービス「こども料理塾クックルー」の事業展開です。事業をはじめるきっかけになったのは、沖縄で障がいを持つ子ども向けのデイサービス事業所を経営する友人と食事をしていたときに、「彼ら(障がいを持つ子どもたち)は親が亡くなったときは、どう暮らしていくんだろう」と話をしたことでした。

そうなる前になにかできることはないのかと考えていると、料理をするといいのではと思いついたんです。料理をすることで創作意欲やチャレンジ精神がわきますし、とくに誰かと一緒に料理しているとコミュニケーションが発生し、相手になにかを的確に伝える力や、相手がなにを考えているのか察知する感性が養われます。

レシピを読み込むのは国語、大さじや小さじなどの量を考えるのは算数、食材を深く知ろうとするのは社会……など、あらゆる分野につながっているのも、料理の素晴らしいところでしょう。そう気づいたものの、障がいを持つ子どもに料理をさせるのは、やはり難しいかなと最初は思っていました。

資金調達よりも経験のある人材集めに苦労

質問

池田: 実際にサービスを行ってみていかがでしたか?

回答

五十嵐: 沖縄で開催してみたところ、子どもたちからとても喜んでもらえましたし、発見がたくさんありました。たとえば「包丁=怖いもの、ケガをするもの」だと認識しているのか、子どもたちは包丁を見ると、一歩引いて手をうしろに隠すような動作をするんですね。

でも、その思い込みは適切ではありません。自立した暮らしをするうえで「包丁に一切触れない」というのはムリですし。料理を通じてそういったハードルを乗り越えられたら、障がい者の健常者との区別はあっても、差別のない世界が作れるのでは、と僕は考えています。

現在、本格始動はしていますが、実務経験を持った人材を集めることが目下の課題です。資金は日本政策金融公庫から「ソーシャルビジネス支援資金」という、社会的な課題を解決するサービスへの融資を検討しています。料理を通じて障がいを持つ子どもたちを自立へと導きたい――そんな思いを持っていて、経験のある方はぜひ僕にご連絡をいただきたいですね。

制限や壁をとり払うと未知への挑戦もできるようになった

質問

池田: 大人になると新しいことに挑戦しなくなりがちです。「こども料理塾クックルー」のように、新規事業をどんどん切り拓いていく原動力は、どこからきているのでしょうか?

回答

五十嵐: 自然とわいてくる衝動だと思います。ですが、大人になると、その衝動をなんらかの形でやめてしまう「制限」や「壁」があるのではないでしょうか。僕には甥っ子がいて、彼の行動を見ていると、人から「しなさい」「やってみたら」などといわれなくても、その空間で絶えずなにかをしているんですね。今の僕自身も彼のような感じで、「制限」や「壁」を作らない状態にできるだけ立って、やりたいことを素直にやるようにしています。

とはいえ、僕も最初からそうだったわけではありません。2年前からコーチングというコミュニケーションを学ぶ講座に通っていますが、そこで抱いたのは「今までしていた“武装”を外し、自由な状態の自分がなにをするか、というところに立ち返ってみたい」という思いでした。“武装”というとこれまでは「経営者とは~でなければ」「上司は~でなければ」など、メディアで見る「こうあるべき論」をよろいとしてまとっていたんです。それがしんどくなってきていたんですね。

同時に「自分ができる範囲」でしか挑戦できなくなっていることに気づいたんです。できることしかやろうとしていない、と。そこで、この半年間「あるがままの自分がやりたいと思うことをやればいい」と考え、それに素直に従って動くようにしました。そうするとよろいを外せましたし、チャレンジする範囲を大きく広げることができました。

始業前の掃除で物事が前進する場をつくる

質問

池田: 仕事をはじめる前にしていることはありますか?

回答

五十嵐: 僕が学んでいるコーチングの師匠から教えていただいた全員で掃除をする習慣を実践しています。以前は社歴の浅い社員が始業30分前にきて掃除する伝統がありましたが、全員で8:40に集合し、8:45~9:00までの時間を掃除にあてることにしました。

単に掃除をするだけではなく、全員が出したい結果を宣誓してから掃除をするのがポイントです。それがびっくりするくらい、現実のものになるんです。僕は「仕事の依頼を4つ増やすぞ」と宣誓したところ、6日間で8つ新規の依頼がきました。

その次は「仕事の依頼を6つ増やすぞ」と宣誓したところ、何だか違和感がモワッと出てきたんですね。8つ新規の仕事がきたのに、ムダに遠慮して6つにしたせいですね。「10つ」といい直したところ、1日に4つ依頼がきた日もありました。掃除をすることで意識がリセットされ、出したい結果を宣誓することで自分の中に明確さが生まれ、物事が前進する場がつくられると学びました。驚くほど効果が出ています。

夫婦で仕事をすると仲間として同じ方向に進んでいける

質問

池田: 夫婦で一緒に仕事をするうえでのいいところや、プライベートとメリハリをつけるためにやっていることを教えてください。

回答

五十嵐: パートナーとして同じ方向に向かっていけるのはいいものですね。夫婦という関係性でありながら仲間でもありますし、仕事で困ったときに力を借りられるますし、僕がどうなると悲しいとか苦しいとか、自分自身が気づいていないことも感じとってもらえて感謝しています。極端な話、24時間一緒にすごすわけで、そのぶんたくさん会話をするので、おたがいに見えてくることが多いのでしょう。

プライベートとのメリハリについていうと、僕たちが働いているのは事務所兼自宅です。レシピなどの撮影の多くは居間で行いますが、就業時間がすぎても仕事の形跡が残っていると、居間にはならないんですよね。たとえるとパレットに青の絵の具を置いたまま、赤い絵の具を出しても混じって汚い色になってしまう可能性がありますよね。

赤い絵の具を出して、それをきれいに使いたいなら、青の絵の具は完璧にとり除く必要があります。それと一緒で、空間も一から居心地のいいものとして作らなければなりません。たとえば、テーブルにパソコンを出しっぱなしにするのではなく、バッグにしまうだけでプライベートな空間に変わります。夫婦二人でそういった小さな工夫を積み重ねて、仕事もプライベートも楽しんでいます。

五十嵐さんがすすめる「良仕事本」はこれ!

質問

池田: 最後に、働く同世代におすすめしたい本を3冊教えてください。

回答

五十嵐: 僕ら86年代の世代の背景には、書店に行けば仕事のテクニックや、部下のしかり方、上司との付き合い方や恋愛の仕方にいたるまで書籍になっていて、1000円くらいで手に入るという便利な環境があります。あらゆることがテクニックとして普遍化したように書いてありますが、なんだかイメージほどうまくいかないということがあるんじゃないかなと思います。

本来、人が何かに気づくまでには、大量の体験による情報があるのではないでしょうか。気づきを得るまでに人が踏むべきプロセスをかっとばしてインターネットや書籍、漫画で予習をしてしまうことで結果を想定してしまい、体験することにアクセスできなくなってしまいがちだと思う感覚があります。

『「ほめない子育て」で子どもは伸びる』

僕がおすすめしたいのは、とくに僕らがテクニック化しやすいコミュニケーションについて、テクニックではなく、コミュニケーションの本質を感性でとらえる本。たとえば、岸英光さんの『「ほめない子育て」で子どもは伸びる』です。
子育てという言葉が入っているため、子育てをしていない人には遠い感じがするかもしれませんが、職場や家庭や友人や趣味のコミュニティでも何でも、人を相手にする場所であれば、どこでも役立つ本質的な気づきがあるんじゃないかと思います。
仕事のために読むのでも、誰かのために読むのでもなく、自分のために読んでいただけたらきっとご自身の生き方にステキな気づきがあるのではと思います。

『出逢いの大学』

僕の転機となった『出逢いの大学』という本もご紹介したいです。僕にとって飲み会はライフワークでしたが、千葉智之さんとの出会いから自分が開いていた5人の飲み会が3か月で100人になりました。仕事の依頼のスケールも飛躍的に広がりました。飲み会の教科書です。とてもステキな本なのでぜひ読んでください。

『ウケる技術』

持っておくと役立つ本でいえば、水野敬也さんの『ウケる技術』です。笑いをとるコミュニケーションをテンプレート化したガチガチのテクニック本ですが、素晴らしく研究されている普遍的な内容なので自分用に無理なく使えるのがポイントです。

▽ 五十嵐豪(いがらし ごう)さん

料理研究家。株式会社フードクリエイティブファクトリー会長。『彼女につくってもらいたい恋レシピ―2ステップで簡単!モテ料理』など著書多数。J:comの「五十嵐豪の大盛りダイエットレシピ」では冠番組でMCを担当。現在はJ:comの「男子料理道場」でMCを担当し、日本全国とシンガポールで連載や料理教室、イベントをプロデュースするほか、障がいを持つ子ども向けの放課後デイサービス「こども料理塾クックルー」の事業展開に力を入れる。
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記事を書いたのはこの人

Written by

池田 園子(いけだ そのこ)

岡山県出身。中央大学法学部卒業後、楽天、リアルワールドを経てフリー編集者/ライターに。関心のあるテーマは女性の生き方や働き方、性、日本の家族制度など。結婚・離婚を一度経験。11月14日に『はたらく人の結婚しない生き方』を発売。
写真撮影ご協力:青山エリュシオンハウス 撮影者:福谷 真理子