しなやかな私をつくる本vol.2~『人見知りでも「人脈が広がる」ささやかな習慣』~

話し上手になる必要ナシ! 相手をハッピーにする空気を作ればOK。女性が生き方や考え方をアップデートし、つよくしなやかな自分を目指すのに役立つ本を月に1冊紹介します。
子どものころ「大人になったら、私は人見知りをしなくなっている」と信じていました。でも、体質はそのまま継続中。そんなことに気づいた人は私だけではないでしょう。
私は人見知りです。ライター・編集者という職業柄仕事でつねに新規の出会いがあり、打ち合わせをしたり、取材をしたりといったことは日常茶飯事。ですがそれはあくまで仕事ですから、人見知りだからとモジモジすることなくきちんと大人の対応をしているつもりです。


大勢の人が集う場での振る舞い方がわからない

問題はそれらを除いた「仕事以外の現場」にあります。大勢の人が集うパーティーや交流会などに行くと、どう振る舞ってよいのかわからず、「どうして参加しちゃったんだろう」「こういう場は苦手だなぁ」と隅の方へ行っておとなしくしたり、周囲のひとりでいる人に話しかけてみたり、モヤモヤしながら過ごしてしまうのです。
このうち、後者の行動は間違いではないものの正解でもないと気づいたのは、金澤悦子さんの本『人見知りでも「人脈が広がる」ささやかな習慣』(実務教育出版)を読んだことがきっかけでした。金澤さんはリクルート出身で、女性向け転職マガジン「Woman Type」起ち上げ人・元編集長で、現在は女性のハッピーなキャリアを支援する株式会社はぴきゃり代表取締役を務める方。華やかな経歴を持つ女性でありながら実は人見知りで、パーティーや交流会も苦手だったとおっしゃるのは意外です。

話すのが苦手なら、相手の話を聞き出して

そんな金澤さんが交流会で人と出会いつながりを生み出すテクニックは、ひとりぼっちでいる人に話しかけるだけではありません。前提として自己PRは脇において、相手の名前を「◯◯さん」とつねに口にしながら(相手の名前を覚える意味合いもあります)イエス・ノーで終わらない質問をして、相手のことをまずは知ること。それにプラスアルファがあるのです。
「『◯◯さんとはもうご挨拶されましたか? △△されている方なんですよ』と、さきほど名刺交換したばかりの人の紹介を申し出ます。相手のことをしっかりヒアリングできていると、他己紹介することができるのです。この工程を何度か繰り返していると、あら不思議。会場に誰も知り合いのいない者同士だったのに、自分がハブとなってひとつの新しいネットワークができ上がっているではありませんか!」(19ページより引用)
初対面の人と話をするのが苦手でも、相手の話を聞き出す能力はそなわっているはずです。相手に興味を持って積極的に質問をしたり、相槌を打ったりすることで、相手は気持ちよく話してくれます。
よほど自己中心的・自分大好きな人でなければ自分がひとしきり話したあとで、「◯◯さんは?」と質問を返してくれるはず。まずは、相手の話を引き出すことから始めることが大事です。

講演・セミナーでは最前列の○側の席に座る

ほかにも新規の出会いをえられるメジャーな場といえば講演会やセミナーがありますが、参加するさいにうしろろかつハジの目立たない席を選ぶ人もいるのでは? 私は仕事柄講演会やセミナーを取材する機会が多いため、最前列に座ることが多いです。ですがその最前列のうち、どこに座るかまではあまり意識していませんでした。
本書で紹介されているのは「最前列の演台に向かって左側の席に座る(講師が左利きの場合は向かって右側に座る)」方法。右利きの人は自分の右側に原稿やメモなどをセットしていることが多く、視線が右下にいきやすいためだと金澤さんは説明します。

講演者に対しては応援モードで!

あとで原稿にしなければならないので、講師の話を真剣にきく私。「ふむふむ」「そういうことか~」と心のなかでつぶやきつつ自然とうなずきながらきいているとき、ふと講師と視線がからむことがあります。一瞬のできごとですが、たいてい講師はうれしそうな表情を浮かべてくれます。いくら人まえで話をするのに慣れていても、きき手が理解してくれているか、また楽しんでくれているか、講師としては不安もあるのでしょう。
私も自分がイベントに呼ばれて人まえで話をした経験があります。誰ひとりうなずいてくれず、ただこちらをじっと見て話を(おそらく)きいているだけ……といった状況だと心が落ち着かず、「あのコメントで良かったのかな……」とソワソワした経験があります。
本書では「講演者やそこにいる参加者を応援しようという気持ち、応援モードで参加しよう」と提唱されています。「何か学んで帰ろう」「せっかく来たからには有意義な時間にしなければ」と思う意欲の高さも大事ですが、それだけではなく「あなたの話をきいていますよ」と態度や行動でしめすことも、その場で相手の印象に残る自分になるための素晴らしい作戦です。
あとで講師と名刺交換をしたり感想を伝えに行ったり、講師の著書にサインをもらったりするときなどにも、講師は「講演中にうなずいてくれていた人だ!」と覚えていてくれるはず。「応援モード」とは講師・きき手双方を幸せにして、かつ関係性をつなぐ素敵な発想です。

人見知りを直そう、なんて思わなくてもよいのです。人見知りでも行動しだいで、人とのつながりは作れますから。人見知りでいることにコンプレックスを抱えている人に、一歩踏み出すパワーを与えてくれる一冊。

2015.10.08

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Written by 池田 園子(いけだ そのこ)

岡山県出身。中央大学法学部卒業後、楽天、リアルワールドを経てフリー編集者/ライターに。関心のあるテーマは女性の生き方や働き方、性、日本の家族制度など。結婚・離婚を一度経験。11月14日に『はたらく人の結婚しない生き方』を発売。 写真撮影ご協力:青山エリュシオンハウス 撮影者:福谷 真理子