この夏絶対「恋」がしたくなる! 片道15分のローカル線で起きた奇跡とは!? <『阪急電車』有川浩(幻冬舎文庫)より>

2014.07.29

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道行く全然知らない人に助けられたことって、けっこうあります。
地図が全く読めない筆者は、都会のジャングルに立ち尽くしたこと、数知れず。悲壮感がただよっていたのでしょうか……。道を聞く勇気もない私に、「どこへ行きたいのですか?」と声をかけて下さって、現地まで案内して下さった方がいました。
今回ご紹介したい本も、片道わずか15分のローカル線、阪急電車の今津線を舞台にした、小さな奇跡の数々のお話です。たまたま同じ電車に乗り合わせた人と心を通わし、乗客の人生が少しずつ交差し、希望へと繋がっていく物語は、時に切なくもあり、胸がおどるような気分でもあり、夢中で読み終えてしまいます。それでは少しだけ、物語をご紹介したいと思います。


『阪急電車』/有川浩(幻冬舎文庫)

阪急電車はレトロな窓にエンジ色の、とてもおしゃれな電車です。この物語は、時間で言えば片道わずか15分そこそこ、阪急今津線の宝塚駅から西宮北口駅までたった8つの駅での出来事が描かれています。
そのわずかな時間の間に、電車内のフとした会話がきっかけで、カップルになる可愛い大学生や、暴力を振る恋人となかなか別れられなくて悩む女性、そして婚約までしていた恋人を寝取られ、妊娠され、結婚されて、呆然とする女性など、さまざまな乗客の人生の一部が描かれています。

たくさんの人の気遣いや優しさに、人はいつでも支えられている。

中でも、ある女性がものすごく勇気ある決断をして、白いドレスを着て阪急電車に乗り込むシーンは、まるで映画のワンシーンのようで(映画化されているのですが)涙が止まらなくなりました。
それぞれの乗客の人生が、電車内で一瞬だけ交錯して、新たな物語を生み、元気づけられて、また前へと進んでいく――。
たとえ暗闇にいても「電車で偶然出会った人」という予想外の救いの手が差し伸べられることにより、そのことをきっかけに、正面から困難なことへと胸をはって立ち向かっていく今津線の乗客の姿から、大きな勇気がもらえるかと思います。

人は、一人では絶対に生きていけない。たくさんの人の気遣いや優しさに、私はいつも支えられている。何とも予想外の方向から、援護射撃が飛んでくることもあるのです。だから、頑張ろうと思わされました。
有川浩さんの作品は、どのお話もとてもドキドキワクワクして、登場する男性が格好良くて、女子におススメなのですが、本書は特に読んで頂きたい一冊です!
ぜひ本書を読んだあと、おしゃれな阪急電車にも乗車してみて下さいね。

2014.07.29

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記事を書いたのはこの人

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Written by さゆ

87年生まれのフリーライター。 本とワンコとカフェが大好きです。 いつでもアワアワしています。 ツイッター:@sayulog  写真撮影ご協力:青山エリュシオンハウス 撮影者:福谷 真理子