寂しさを埋めるにはどうしたらいい? 男を襲う謎の少女ギャング団登場!! ~『アズミ・ハルコは行方不明』(山内マリコ/幻冬舎)より~

2014.07.22

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「夜になると少女ギャング団が出るから、男性は一人歩きを控えるようにとのお達しが警察から発表されて三週間。」
今回ご紹介したい本は、こんなプロローグで始まるポップでミステリアスな無敵のガールズ小説です。夜になると、男性を無差別に襲う謎の女子高生が現れる地方都市を舞台に、「女の子が幸せになるにはどうしたらいいんだろう?」という疑問を、ノリと勢いだけで生きる若者たちが、考えていくストーリーです。
寂しいとき、男性に頼っても何だか虚しい。幸せになりたいけど、どうしていいかわからない……。そんな心のモヤモヤを抱えた女子たちにぜひ読んでほしい、甘酸っぱいお話です。


『アズミ・ハルコは行方不明』(山内マリコ/幻冬舎)

夜になると“少女ギャング団"が現れる、とある地方都市。色気はないけどぎりぎりブスじゃない、自分に疲れている21歳の女の子「愛菜(あいな)」は、中学の同級生ユキオと学(まなぶ)と再会します。
ユキオと学は映画『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』を見て、田舎の街をグラフィティアートで自由に彩るアーティストの姿に感動し、2人でアートユニット「キルロイ」を結成します。ヒマな愛奈は二人に割り込み、セックスしたり遊んだりするように。
彼らはグラフィティを始めるうちに、行方不明者として捜索願が出されている安曇春子(アズミ・ハルコ)という失踪時28歳の女性の張り紙を見つけ、ただ描くだけじゃ面白くないから、という理由で、街中の至る所に「アズミ・ハルコ」のグラフィティアートを書き始めます。しかしその頃ネットでは、失踪した安曇春子と、少女ギャング団の関連が噂され始めていました。彼女はどうして消えたのか? 奇妙な事件と、そこに住む若者たちの様子をコミカルに描いた群像劇です。

めちゃくちゃだけど、可愛くて元気が出る!

若者たちの息苦しいほどの倦怠感に、上っ面だけの会話。夢を叶えることも難しく、恋愛やセックスだけではうまらない寂しさを持て余す女の子たちの姿が、時に可愛らしく、時に痛々しく描かれていました。ですが、彼女たちは心にポッカリ空いた穴を埋めるものを、最後にはちゃんとつかんでいたような気がします。不安や虚無感に支配されそうになったとき、思わず男性に頼ってしまったり、SNSで繋がりを求めてしまう人は、きっと多いですよね。ですが、女子はそこから抜け出そうともがく、底力だってちゃんと持っている。絶対、大丈夫! そう感じさせてくれる、とびきり可愛い、元気が出る小説です。良かったら、読んでみて下さいね。

2014.07.22

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記事を書いたのはこの人

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Written by さゆ

87年生まれのフリーライター。 本とワンコとカフェが大好きです。 いつでもアワアワしています。 ツイッター:@sayulog  写真撮影ご協力:青山エリュシオンハウス 撮影者:福谷 真理子