どんな高校時代も懐かしくなる!映画「桐島、部活やめるってよ」は大人こそ観たい名作だったよ

高校時代なんてもはや十何年前の話よ? そう思ってしまいますが、8月11日公開の映画「桐島、部活やめるってよ」を観ると、急速にその時代に引き戻される感じがたまらない……!


この作品の原作は、平成生まれの直木賞候補作家・朝井リョウ氏の「桐島、部活やめるってよ」(集英社)という青春小説。著者が早稲田大学在学中の2009年、第22回小説すばる新人賞を受賞したデビュー作でもあります。

イケメンでしかも若い作家かつ執筆ペースが早すぎるという理由で、朝井リョウ氏をかねてから注目してきた私は、本作の映画化決定を知って小躍りするほど嬉しかったのを覚えています。

この「桐島、部活やめるってよ」の舞台はごく一般的な高校。放課後は校内各所に「色」があります。新作の企画に頭を悩ませる映画部、アクティブに練習に励む野球部やバドミントン部、バレー部、全員で心をひとつにして演奏に取り組む吹奏楽部、おしゃべりに興じる帰宅部……いつもと変わらないありふれた日常が広がっていました。

ただひとつ、バレー部男子キャプテン・桐島が、突然部活を辞めていなくなったーーこの噂が駆け巡ったことを除いて。桐島の男友達はもちろん彼女すら桐島と連絡が取れないという、とても不思議な事態が起こります。

高校という小さな世界の中に存在する「ヒエラルキー」。これは誰もが意識したことがあるはず。しかし在学中ではなく卒業してから「あのときはそうだったな」と気付くものでもあります。当時は気付かないまま、そのヒエラルキーの中へ巻き込まれている感じ。体育会系は上、文化系は中~下、オタク系は下というような、明らかな格差みたいなものがあるのでした。あるある、と思い出しませんか?

同じ空間にいても関わることなく過ぎ去って行く関係もあります。「交わることがない」という表現が的確かも知れません。上と下の者はそもそも交流がありません。しかし桐島を巡るドタバタは、普段関わり合うことのない者たちを絶妙に絡ませて、ある意味で学内をひとつにまとめてしまうのでした。交わらない線がふっと交差したときに何が起こるか、そして桐島は誰なのかーー最後まで目が離せない作品です。

キーとなる映画部の部長を演じるのは神木隆之介クン。少しオタクっぽい演技でさらなる飛躍を見せています。注目すべき若手イケメンとして挙げたいのは、野球部の幽霊部員・菊池宏樹役を演じた東出昌大クン。メンズノンノやパリコレなどで大人気のモデルだったのですが、今回重要な役に大抜擢されました。「これからは俳優一本でいく」と決めた東出クンが披露する、透明感のある素朴な演技にも着目したい。

監督は『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』『クヒオ大佐』などで知られる吉田大八氏。フレッシュな若手俳優たちが魅せてくれることでも、瑞々しくて何だか懐かしさを誘う一作となっています。高校時代に上にいた人も下にいた人も「こういうのあったなぁ」とキュンとくること間違いなし。お盆休みに観に行ってみてはいかが?

桐島、部活やめるってよ
8月11日(土)新宿バルト9ほか、全国ロードショー
原作: 朝井リョウ
『桐島、部活やめるってよ』(集英社刊)
監督:吉田大八
出演: 神木隆之介、橋本愛、大後寿々花 、東出昌大、清水くるみ、山本美月、松岡茉優、落合モトキ、浅香航大、前野朋哉、高橋周平、鈴木伸之、榎本功、藤井武美、岩井秀人、奥村知史、太賀、ほか
配給:ショウゲート
(C)2012「桐島」映画部 (C)朝井リョウ/集英社

2012.08.15

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Written by 池田 園子(いけだ そのこ)

岡山県出身。中央大学法学部卒業後、楽天、リアルワールドを経てフリー編集者/ライターに。関心のあるテーマは女性の生き方や働き方、性、日本の家族制度など。結婚・離婚を一度経験。11月14日に『はたらく人の結婚しない生き方』を発売。 写真撮影ご協力:青山エリュシオンハウス 撮影者:福谷 真理子